中小企業こそ実践したい!
チームビルディングのイロハ
上意下達はもう古い!
理想の組織は全員参加
「従業員にやる気がない」「人が育たない」「すぐに辞めてしまう」といった"人"に関する悩みを抱えていませんか。
従業員のモチベーションをアップし、会社を成長させる
理想的な組織はどうつくればよいのか紹介しましょう。
- チームビルディングのイロハ
- 組織
- ボトムアップ
この記事のポイント
- 組織構造のトップに置くべきはお客さま
- 会社の規律を守らせることが従業員の主体性につながる
- 平時はボトムアップ、有事はトップダウン
「理想的な組織」と聞いて、思い浮かべるのはどんな組織だろうか。カリスマ性のあるトップが率いる組織や、従業員が主体的に行動する組織など形態は多様だ。どんな組織を理想として、構築していくかは経営者それぞれの考えに委ねられる。にもかかわらず、そこが定まっていない経営者が意外に多いと松本毅氏は指摘する。
「自らが率いる組織をどう運営し、未来を描くのか。そのためにどんな組織が理想的なのかを、経営者は従業員に明確に示す必要があります」
トップに置くのはお客さま
かつて組織構造は、経営者をトップとする上意下達の管理型(トップダウン型)が主流だった。それが時代の流れとともに、フラットで従業員各自の自主性を重んじるボトムアップ型へと移りつつあるという。しかし、中小企業においては「完全なボトムアップ型より、トップダウンとボトムアップを組み合わせたハイブリッド型が向いています」と松本氏は分析する。
ハイブリッド型とは、会社の理念や方針、戦略はトップが明文化して掲げ、それに賛同した従業員の意見や提案をボトムアップしていく組織構造だ。ここで重要なのは、現場が「誰を見て仕事をするか」。従来の経営者をトップとするトップダウン型では、どうしても上層部を重視する傾向が生じやすい。これを解消するかたちの一つが、逆ピラミッド型思考だ(図A)。
トップにお客さまを置くことで、誰のために働くかという視点がぶれない。経営者が支えることで現場は上層部のバックアップが実感でき、従業員満足度(ES)を得られやすい。ESには給与や休暇が多いといった物理的な側面と、仕事を通じて社会的な意義を感じられる精神的な側面がある。ハイブリッド型+逆ピラミッド型思考は、従業員の物心両面の満足度を上げ、上層部と現場が一丸となって共通の目標を達成できる全員参加の組織構造といえるだろう。
主体性の第一歩は規律の順守
こうした組織構造において重要なのが、従業員の主体性だ。その育成に松本氏が提唱するのが「かたちから入って心に至る」。"かたち"とは、挨拶や掃除、朝礼など、会社の規律を従業員が順守するよう管理することだ。
一見、主体性とは相反するようだが、実はかたちから入るのが主体性を育む第1ステップになるという。ただし、一方的な管理はご法度だ。上意下達で管理するのではなく、何のために規律があってそれを守るのか、目的を明確にする必要がある。
「若い世代は説明を求めるのが特徴で、『何でもいいからやれ』は通用しません。頭で目的が理解できたとしても、腹落ちするには時間がかかります。繰り返して実行すると納得し、分かることも多いですから」
まずはかたちに従い規律を守る素直さを養う。すると何事にもトライする心の醸成につながる。ちなみに松本氏の職場では、朝礼に関して細かな規則があり、トップを含め全員が実行し、定期的にその様子を顧客に公開しているのだそうだ。見学をアテンドするのは入社1年目の従業員で、ルールの説明や事務所の案内を担当する。顧客という第三者の存在やそこで得るリアクションを通して、主体性を持ち始める従業員も少なくない。
オープンな情報は噓をつかない
主体性の育成と同じく重要なのが2つの情報開示だ(図B)。1つ目は経営者の理念や考えを明文化し伝えること。このとき会社の方向性はもちろんのこと、従業員にどういう未来を用意したいと考えているかまでを開示すると、従業員が自らの先行きを具体的に描けるようになる。
もう一つは売り上げや利益など、会社が持つ数字の開示だ。現場の努力や頑張りがどう関与したのかが明確になるだけでなく、経営者が示した情報開示の裏付けにもなる。数字は噓をつかないからだ。
具体的な方法として、目標とする売り上げなど、会社の運営全体に関する数字はトップが決定し、各現場の数字は従業員に決めさせるやり方がある。数字が合わない場合は、一緒に検討を重ねる。「自分たちの意図が数字に反映され、決定のプロセスに参加できると、従業員は自分ごとと捉えやすくなります」
ただし、単に数字だけの公開は勘違いや誤解も生みやすい。納得がいく丁寧な説明をして、段階を経て開示するなどの配慮は必要だ。
有事は必ずやってくる
自然災害が多発し、世界情勢が緊迫化する昨今、有事の際の会社の在り方が注目されている。有事と平時で組織はどうあるべきか。
「有事の場合、多方面にわたり即時決定が必要になるケースが多いです。平時は現場に主体性を持たせていても、有事はトップが率先垂範を示さなければなりません」(松本氏)
有事においては財務状況が会社の存続に直結する。財務が強いと時間的な余裕が生まれるからだ。内部留保が十分にあれば、従業員とその家族を守ることにもつながる。平時から会社としての心構えや情報をメッセージとして従業員に伝えたい。
松本 毅
税理士法人古田土会計 執行役員中央大学卒。政府系金融機関を経て2006年、古田土会計グループ入社。プロセス改革事業本部の最年少部長として、仕組み化・業務改善・社員教育に従事。蓄積したノウハウは、毎月自社・同業者向けに研修を実施し延べ750人以上が受講している。