中小企業こそ実践したい!

チームビルディングのイロハ

従業員が積極的に話し出す
会議の運び方

「従業員にやる気がない」「人が育たない」「すぐに辞めてしまう」といった
"人"に関する悩みを抱えていませんか。
従業員のモチベーションをアップし、会社を成長させる理想の組織はどうすればつくれるのか、ご紹介します。

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この記事のポイント

  • 会議の目的を明確にすると発言しやすくなる
  • 会議への出席者は2階層に絞る
  • 求められるのは「傾聴力」。否定するのはNG

今回のテーマは「会議」。一口に会議といっても、内容は千差万別だ。経営者が一方的に話すだけの会議があれば、参加者全員が活発に意見を交わし合う会議もある。ただ、多くの経営者に共通する悩みは、従業員からの発言が少ないことだろう。松本毅氏は、「実は発言したくてもできないのかもしれません」と指摘する。

例えば従業員は会議の際、次のような思いを抱いていないだろうか。

  • 意見を出してもどうせ受け入れてもらえない
  • 招集がいつも突然で、事前に資料を準備する時間がない
  • 目的が曖昧で、何が議題なのかが分かりづらい

意見を受け入れてもらえないのはもちろん、準備の時間がなかったり、何が議題なのか分からなかったりでは発言は難しい。従業員が発言しない背景には、こうした理由があるケースがほとんどだ。

会議の目的を明確に

では、従業員が積極的に発言し、経営にプラスとなる会議を開くにはどうすればよいのだろうか。従業員が発言を求められる会議は、アイデア出しがメインとなるブレーンストーミング(ブレスト)会議や、プロジェクトの進み具合を確認し合う進捗会議など、目的によって種類が分かれる(図A)。「中小企業でよく見かけるのが、1つの会議に目的を詰め込みすぎるケース。ブレストと意思決定を一度に済ませようとすると、たとえ活発に意見が出たとしても後からまとめづらくなります」

図A 会議の種類(一例)

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意思決定会議方針と具体的な行動を決定する/ブレスト会議アイデアを持ち寄り、気付きを増やす/情報共有会議情報を共有して効率化を図る/進捗会議プロジェクト等の進捗を確認する

これを防ぎ、発言しやすい会議にするポイントをまとめたのが図Bだ。まずは事前に集まる目的が分かるよう会議に名前をつける。「情報共有会議」「進捗会議」と名称があるだけで、心構えをして臨める。

次に会議の目的とゴールをはっきりさせる。すると出席者は事前準備をしたり、考えをまとめたりする余裕が生まれ、発言しやすくなる。ゴールも設定されており、話が脱線したりダラダラと雑談が続いたりもしない。

図B 発言しやすい会議にする5つのポイント

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1 とにかくアイデアを出す/2 意見を否定しない/3 反対する場合は代替案を出す/4 問題が起きているときは「どうすれば解決できるか」に置き換える/5 決定してから会議を終える

出席者は2階層まで

会議の参加メンバーは必要な人だけに絞り込もう。「中小企業にありがちなのが、幹部から現場まで全員を招集した会議です。年頭の訓示や報告会ならよいのですが、出席者が多すぎると、無駄に会議を混乱させてしまうだけです」

松本氏は、1つの会議の出席者を2階層までに限定すべしと提案する。「階層」とは、経営者と幹部、部長と課長など組織における職の階層を意味する。出席者の階層を絞ると会議の方向性が明確になり、目的がぶれにくくなる。時には、発言を促すために"間"を抜いた2階層にするのも効果的だ。例えば部長が現場の声を吸い上げる会議の場合、部長、課長、現場の従業員の出席を想定しがちだが、現場はすぐ上の階層職(この場合は課長)がいると発言しにくい場合もある。課長を抜いて部長と現場の2階層にすると、発言しやすくなる。

持つべきは傾聴力

出席者自身の在り方も、会議の雰囲気を醸成する大事な要素だ。図Cに会議に臨む際の心構えを挙げた。

図C 会議に参加するときの心構え

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「発言しやすい会議にする5つのポイント」会議に名前をつける/会議の目的とゴールを明確にする/必要な人だけ出席する/1つの会議に出席するのは2階層まで/自由に発言できる雰囲気をつくる

発言者の意見が自分とは異なっても、即座の否定はNGだ。意見に反対するだけでは、会議が停滞してしまう。2024年7・8月合併号で取り上げた「傾聴力」を発揮して、「まずは受け止める」寛容な姿勢を心がけたい。反対意見を述べたとしても、代替案も出したり、別の観点から見直したりして、意識的に会議を進めよう。

問題が起きている場合も同様だ。「すでに起きてしまった出来事の"犯人探し"にやっきになるのではなく、『どうすれば解決できるか』に置き換えた議論が大切です」と松本氏。

会議はなんとなく終わらせるのではなく、前もって定めたゴールに近いところで着地させることも意識しつつ進めよう。

各自がこうした心構えを持つと、会議はスムーズに進行し、発言しやすい雰囲気を生み出せる。

朝礼や夕礼はしていても、これまでかしこまった会議を開いた経験がない企業に松本氏が提案するのは「決定する会議」と「チェックする会議」の2つだ。前者は経営者や幹部など、決定権を持つ階層が出席して決める会議。後者は決定事項が現場に落とし込めているか、進捗を確認する会議だ。

「まずは何かを決定する会議を、次に決定したことをチェックする会議を開催し、社内に会議を行う習慣をつくっていくとよいでしょう。現場からの情報は、上司と直属の部下が1対1で行う面談で吸い上げたり、日報などを通じて上司に提言できる仕組みをつくったりすると、次の会議の議題にしやすいです」

会議の運営力を経営に生かす

会議の席で従業員自ら意見を述べ議論をすると、彼らの自立心や参加意識が高まる。会議の運営を通じて培われたスキルは業務自体にも生かされ、ゆくゆくは会社全体の活性化にもつながる。今日から会議の仕方を見直してはいかがだろうか。

監修

松本 毅

税理士法人古田土会計 執行役員

中央大学卒。政府系金融機関を経て2006年、古田土会計グループ入社。プロセス改革事業本部の最年少部長として、仕組み化・業務改善・社員教育に従事。蓄積したノウハウは、毎月自社・同業者向けに研修を実施し延べ750人以上が受講している。