中小企業こそ実践したい!
チームビルディングのイロハ
会社の存在意義は
社内外にミッションで示せ
「従業員にやる気がない」「人が育たない」「すぐに辞めてしまう」といった"人"に関する悩みを抱えていませんか。
従業員のモチベーションをアップし、会社を成長させる
理想の組織はどうすればつくれるのか、ご紹介します。
- チームビルディングのイロハ
- ミッション
この記事のポイント
- 明確なミッションづくりは採用にも生きる
- ミッションに必要なのはシンプルさとワクワク感
- 時代に合わせて変えても問題なし
昨今、事業経営において「ミッション」を掲げる会社が増えている。従業員が共有できるようハンドブックを作成したり、セミナーを開催して理解度を深めたりする企業もある。
企業にとって、ミッションはどんな意味を持つのか。図Aはリーダーシップ学の権威であるサイモン・シネック氏が示した「ゴールデンサークル理論」を図式化したものだ。事業を展開していく際、HOW(手段・方法)やWHAT(商品・サービス)ではなくWHY(信念・目的)、つまり「なぜそれをするのか」を中心に置き、そこから外に向かって説明をすると人々の共感を得やすいといわれている。
「ミッションはこのWHYに当たります。会社が何のために存在するのか、仕事を通じてどんな価値を世の中に提供するのか、社会において何を実現したいのかを表明します。会社の存在意義=ミッションとなります」と、松本毅氏は語る。
採用にも生きる
なぜミッションづくりが必要なのか。事業を展開するうえで、 手段がいつの間にか目的になるケースがしばしばある。例えば「従業員が安心して暮らせるよう売り上げアップを目指す」としたはずが、いつしか売り上げ向上が目的となり、達成するにはどんな手段もいとわなくなるといった具合だ。
明確なミッションは、こうしたズレを気付かせる存在となる。会社の本来の目的がブレないようにする役割を果たす。部署や従業員はミッションに沿って、それぞれの仕事の意味や存在意義を考えられるようになり、目指す先が分かりやすくなる。
「『がむしゃらに働け』が通用していた時代と異なり、現在は従業員が働く意味を求める傾向が強くなっています。『何のためにその仕事をするのか』に対して、常に明確な答えがあるかが重要です。ミッションはその答えになります」
明確なミッションは、従業員の採用にも効果的だ。「人の価値観はそれぞれです。もともと方向性が違う人たちに同じ方向を向かせるのは容易ではありません。だからこそ採用の場が肝心。ミッションに共鳴する人材の選別は、会社にとっても求職者にとってもミスマッチ防止につながるのです」
シンプルとワクワクを重視
具体的にミッションを作成するとき、気を付けるべきポイントとして松本氏は次のような点を挙げた。
- 分かりやすさ
- 会社の存在意義を表現しようとすると、つい難しい言葉を選びがちになる。誰もが理解できる言葉を心がける。抽象的な概念ではなく、メッセージとして具体的に示すのが肝心。シンプルで分かりやすい言葉で構成する。
- ワクワク感
- ミッションを見たとき、ワクワクするかどうかも大切な要素。「こんな世界が実現できたらいいな」と共感してもらえれば、共鳴する顧客や従業員の獲得につながる。
具体的にミッションづくりに取り組みたいが、どこから始めればよいか分からないときに考えるヒントとなるのが図Bだ。「自分」「自分以外」「有形」「無形」の4象限に、自社の目的や目標を書き出し、整理してみよう。その結果、左下の「主に自分以外のことで無形の目的・目標」に書き出されたものが、ミッションにふさわしい言葉になるはずだ。
発表の場で自分ごと化
ミッションが決まったら、次は社内への浸透だ。朝礼などで日々唱和させても、全従業員が腹落ちするとは限らない。経営者や幹部は折に触れ繰り返したり、事例を出して理解度を深めたりする努力が必要だ。一方的に伝えるインプットだけでなく、アウトプットできる場を設けると自分ごと化しやすい。
松本氏の事務所では、週1回、ミッションを遂行するための取り組みを従業員が朝礼で発表している。全員の投票で、発表者の中から優秀者を選び、モチベーションアップにもつなげているという。
加筆や変更もOK
最初から完璧なミッションをつくるのは容易ではない。まずは作成し、少しずつ修正を加えたり、時代に合わせた表現に変えたりしてもよい。図Cは松本氏が所属する古田土会計が掲げるミッションの変遷だ。「かつて"幸せ"というキーワードは、会社経営に結び付かなかったが、近年は市民権を得ています。我々が貢献していく範囲において、幸せにフォーカスするために、ミッションにそれを加えました」と松本氏。
会社の存在意義を明確にするミッションづくりに取り組んでみてはいかがだろうか。
松本 毅
税理士法人古田土会計 執行役員中央大学卒。政府系金融機関を経て2006年、古田土会計グループ入社。プロセス改革事業本部の最年少部長として、仕組み化・業務改善・社員教育に従事。蓄積したノウハウは、毎月自社・同業者向けに研修を実施し延べ750人以上が受講している。