リーダーたちの羅針盤

少数精鋭の強みを
生かし
コミュニケーションで
チーム・ダイニチを
創る

ダイニチ工業株式会社
吉井 唯代表取締役社長

1976年新潟県生まれ。立命館大学大学院理工学研究科修了後、大手メーカーに勤務。2014年4月、祖父が創業し父(現会長)が社長を務めるダイニチ工業入社。17年に経営企画部長として同社の強みを内外に対してより明確にし、ブランドとして発信していくためにコーポレートロゴを一新。18年管理本部長、20年開発本部長、21年代表取締役専務を経て、22年6月代表取締役社長に就任。主軸の石油ファンヒーター、加湿器といった基幹事業以外に、新たにコーヒーメーカーや生ごみ乾燥機市場にも参入。事業の柱とすべく、新規開拓を進め事業を改革している。

  • ものづくり
  • ブランド戦略
  • チームワーク
更新

この記事のポイント

  • 品質や仕事に対して妥協しない文化を強みに
  • ロゴマークの一新が社外への発信力強化につながった
  • 社員総出のイベントを通じてコミュニケーションを図る

新潟県で1964年に創業したダイニチ工業は、国内生産を貫き石油ファンヒーターと加湿器の国内トップクラスのシェアを誇る。この会社の強みは製品力だけではない。離職率1~2%という数字が示すように、従業員が長く働き続けたいと思える企業文化こそが真の強みと言える。
製品としての進化を探求し続ける一方、得意分野の深化にこだわり、人と人のつながりを何よりも大切なものとしてきた。

妥協しない社員の意識をさらに生かす

ロゴマークの一新で認知度アップとともに、従業員にブランドを背負う責任感を意識付けた

ダイニチ工業へ入社したのは38歳のときです。もともとものづくりに興味があり、大学では機械工学を専攻しました。祖父が創業し父が経営する会社としてダイニチ工業には憧れがありました。大学院修了時、ダイニチ工業への入社も視野に入れつつ、父に進路を相談しました。しかし、父からは「他の企業に就職しなさい」との思いがけない返事があり、私は大手メーカーに就職しました。生産技術の部門で製品を効率良く量産する技術開発などに約10年携わりました。
2014年、当時社長であった父から打診があり、ようやくダイニチ工業に入社しました。その際、実は私にはダイニチ工業ホームページで紹介されている内容程度の知識しかありませんでした。入社して最も驚いたのは、従業員の真面目さと品質に対する厳しい姿勢です。創業から石油暖房機器の販売を手掛け、安全性に関して厳格なまでに徹底している。前職で技術営業として多くの企業の生産現場を見てきましたが、社内には品質や仕事に対して妥協しない文化が根付いていると実感しました。
一方で、この強みを生かして、これからもっと成長できるとも感じました。各地の家電量販店での販売に同行させてもらい感じたのは、製品の素晴らしさとブランド知名度とのギャップでした。主力商品である石油ファンヒーターも加湿器も、細部まで行き届いた性能を備え、自信を持って説明できる。店頭での評価も高い。実際の販売シェアもトップクラス。それなのに購入する顧客は当社の名前を知らない。加えて、売れる商品はスタンダードモデルばかりで、高価格帯のハイエンドモデルは有名メーカーの牙城でした。
私はこの状況には「伸びしろがある」と考えました。可能性を最大限引き出すべく経営企画部を立ち上げ、ブランド戦略に着手しました。最初に取り組んだのが、会社ロゴマークの変更です。それまでのロゴは、自社ブランド名は探さなければ見つけられないほど控えめな表示でした。ロゴの一新は社外への発信力強化に加え、社員にもブランドを意識付けする狙いがありました。ハイエンドモデルにおいても商品開発をさらに進め、商品ラインアップを見直しました。石油ファンヒーターと加湿器はダイニチ工業ブランドとして統一感を持たせました。

伝統のイベントを通じてチームワーク力を高める

運動会には社内外から約800人が参加する。長年にわたりコミュニケーションを図ってきた

従業員数約500人の当社は、競合メーカーに比べれば規模は大きくありません。コンパクトだからこその強みがあります。コミュニケーションが図りやすく、意思決定が速い。柔軟な機動力を持っています。良いものを作る共通意識の下、各部門が連携し合い、精度を高め合っている。チームワークこそ当社の強みです。
ずっと大事にしているのが社員旅行や運動会です。所属や年代を超えたコミュニケーションと、「チーム・ダイニチ」としてのチームワークを深められるからです。社員旅行は67年に始まり、毎年6月に実施しています。25年は2泊3日のスケジュールで約350人が参加しました。全員参加の宴会では食事を楽しみながら社員同士の親睦を深め、宴会後はおのおのの時間を過ごしました。私もずいぶん年齢の離れた若い同期との同期会を楽しみました。
運動会は78年から続き、協力工場の従業員も含め約800人が参加しています。4つに分かれたチーム戦で、会社や部署の垣根を越えて協力し合って戦い、盛り上がります。私も可能な限り全競技に出場しています。

社員総出のイベントは、若手従業員が主体となって実行委員会を結成し運営します。年代や部門を超え、人間関係を育める貴重な体験だと思っています。他にも私の発案で年に数回、業務を30分早く切り上げて6〜7人の小グループでお菓子を食べながら雑談する機会も設けています。雑談のテーマやグループの組み合わせは管理部門がその都度考えます。普段接しない人と話をする機会を持てば、業務への理解や部署を越えた相談事がスムーズに実現します。私も積極的に、普段接点のないグループに参加して雑談を楽しんでいます。

離職率1%台を支える企業文化

離職率わずか1%台の実績が評価され、「『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞」の実行委員長賞を受賞した

実直な社内風土、イベントを通じて縦横斜めの人間関係が自然にできる環境づくりの成果があり、評価もされました。私の入社前の12年に「『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞」の実行委員長賞を受賞しています。その後も当社は過去10年間、自己都合による離職率は平均1.7%と非常に低い状態です。従業員が会社に愛着を持ち、仕事に誇りを持ち続けていることが、この結果に表れているのだと思います。

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企業情報

社名
ダイニチ工業株式会社
事業内容
暖房機器(石油暖房機器、電気暖房機器、ガス暖房機器)、環境機器(加湿器、空気清浄機、燃料電池ユニット)、その他(部品、コーヒー機器他)の製造販売
本社所在地
新潟県新潟市南区北田中780番地6
代表者
吉井唯
従業員数
477人(2025年4月1日時点)

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