
忙しいときこそ知っておきたい
健康生活のススメ
花粉症が引き金になるケースが増加
大人の食物アレルギー対策
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この記事のポイント
- 食物アレルギーは花粉やラテックス(ゴム)なども原因になる
- 花粉症やぜんそく、職場環境にも注意を払いたい
- 食物アレルギーを発症したら、周囲の理解と協力が重要
大人の食物アレルギーは食品だけでなく、花粉やラテックス(ゴム)なども原因となります。今は問題がなくても、これから発症する可能性もあります。基本的な知識を身に付けましょう。
食物アレルギーとは、ある特定の食品を摂取した後に、かゆみや湿疹、下痢、せきなどのアレルギー反応が起こる病気です。「食後に起こる通常型の食物アレルギーは、食品に含まれるたんぱく質がアレルゲン(原因物質)となって発症します」と、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門 准教授の鈴木慎太郎さんは説明します。
体内では、入ってきた異物と反応する免疫機能が働いています。アレルゲンと結合するのがIgE抗体です。特定のアレルゲンに対するIgE抗体を産生するようになることを「
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食品以外の原因も
食物アレルギーは遺伝や環境などの要因が組み合わさり発症すると考えられています。近年は運輸や技術の発達による、多様な花粉や化学物質の増加も影響している可能性があります。誰でも発症する恐れがあるのでしっかり対策していきましょう。
大人の食物アレルギーは
花粉起因でも発症
食物アレルギーがなくても、花粉症の場合は要注意。
花粉と食物アレルギーの関係をぜひ知っておきましょう。
一見関係がなさそうな花粉と食品ですが、実は共通項があります。花粉は植物。野菜や果物、豆やナッツも植物です。植物の中には、構造がよく似たたんぱく質があります。
花粉症の人が構造の似たたんぱく質を持つ野菜や果物を食べると、花粉のアレルゲンが体内に入ってきたと間違えてアレルギー反応が起こります。これを交差反応といいます。
表は、どの花粉がどの食品と交差反応を起こすのかを示しています。花粉による経気道感作が原因として先にあるため、「花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼ばれます。
花粉症であっても現状で食物アレルギーの症状がなければ心配する必要はありません。
花粉-食物アレルギー症候群に関係する主な花粉と植物性食品
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ゴムの木の樹液も関係
食物アレルギーには、皮膚からアレルゲンが侵入してアレルギー反応を起こす経皮感作もあります。「ラテックス-フルーツ症候群(LFS)」はその代表例です。
「ラテックスはゴムの木の樹液を加工した製品です。ラテックスアレルギーの人がゴムの木に含まれるアレルゲンと似た構造を持つ植物性食品(下囲み参照)を摂取すると、アレルギー症状が出る場合があります」
医療や介護、衛生管理に関わる職業などで、日常的にラテックス手袋を多用する人は注意したい。
ラテックス-フルーツ症候群に関係する主な植物性食品
ラテックスアレルギーでは、特にアボカド、バナナ、クリ、キウイフルーツを摂取した際に、交差反応によりアレルギー症状が出やすい。他に、西洋ナシ、レタス、セロリ、ジャガイモ、トマト、イチジク、パパイア、メロン、マンゴー、パイナップル、モモなどもリスクがある。
食品を扱う仕事では、経皮感作により、アレルゲンを含むものを食べなくても皮膚や粘膜に症状が出るケースもあります。
職業や職場環境による発症は、大人の食物アレルギーの特徴の一つです。症状によっては職場の変更、休職や離職を余儀なくされる場合もあり、企業側の理解も重要です。特に食品の調理加工を行う職場ではリスクが高いので留意しましょう。
食品を扱う仕事では職業性の食物アレルギーのリスクも

魚や肉を加工して缶詰にする、ナッツ類を粉砕して瓶詰にする、小麦粉をこねてパンや菓子を作るなど、食品の調理加工が行われる職場では、皮膚や粘膜、気道などからアレルゲンに感作するリスクがある。感作が起こると、特定の食品の摂取後、アレルギー症状が現れる。
花粉症やぜんそくがあるなら
その治療が先決
食物アレルギーで特に気を付けたいのが重症化によるアナフィラキシー。
症状が出る前、あるいは軽いうちにしっかり予防と対策を。

花粉症はもちろん、ぜんそくやアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患がすでにある人は、食物アレルギーを発症するリスクが高いと考えられています。
「持病であるアレルギー疾患をきちんと治療することは、食物アレルギーの重症化予防のためにも重要です」
スギ花粉による花粉症やダニによるアレルギー性鼻炎は、保険適用の舌下免疫療法で根本的な改善が期待できます。アレルゲンを繰り返し、長期的に体内へ投与して体を慣れさせ、アレルギー症状を抑えたり、和らげたりします。減感作療法とも呼ばれます。
ぜんそくやアトピー性皮膚炎には、生物学的製剤や分子標的薬と呼ばれる新薬が近年にかけて充実し、症状を非常によくコントロールできるようになってきています。
アレルギー疾患の適切な治療は、食物アレルギーの予防だけでなく、日常生活の質の向上や仕事のパフォーマンス向上にもつながります。
食事と行動を記録
食物アレルギーの多くは即時型と呼ばれ、原因となる食品を摂取してから15分~2時間以内に症状が現れます。症状はかゆみやじんましん、目の充血やまぶたのむくみなどの皮膚粘膜症状、
この他、食後数時間から半日くらいたって発症する遅発型、小麦やエビなど特定の食品を摂取した後に運動すると発症する食物依存性運動誘発アナフィラキシーなどの病型も存在します。
重症化を防ぐには、なるべく早く食物アレルギーの有無を自覚し、専門医を受診し原因を特定してもらい、その原因となる食品を取り除くことが重要です。
「気になる症状があるなら、多少面倒でも毎日の食事や行動を記録しておくと良い。症状が起きたときのパターンや共通点が見つけやすく、医療機関を受診する際に持参すれば、診断の手掛かりになります」
「花粉による食物アレルギーかな」と不安を感じたら
①どんな症状が起きているか自覚する
花粉-食物アレルギー症候群は「口腔(こうくう)アレルギー症候群」ともいわれ、生の野菜や果物を食べたときに口の中や喉、耳の奥などにかゆみやイガイガ、痛みなどの症状が現れる。これらの症状に気付いたら②へ。

②症状が起きる前の食事を調べる
発症前の食事に、「花粉-食物アレルギー症候群に関係する主な花粉と植物性食品」の表に示した野菜や果物が含まれているなら、花粉-食物アレルギー症候群が疑われる。明らかに症状が出る食品を避ければ、重症化することは少ない。

③医療機関を受診する
症状が軽くても、食べ続けるとコンディションによっては重症化のリスクがある。不安な場合は、アレルギー専門の診療を行う医療機関や呼吸器内科、アレルギー科、耳鼻咽喉科などで検査を。原因となる食品が分かっていると診療もスムーズだ。

食物アレルギーがある人は
自己申告を忘れずに
すでに食物アレルギーを発症している場合はアナフィラキシー対策を。
自分から周囲に理解や協力を求めることも重要です。
食物アレルギーを自覚している、あるいは医療機関で診断を受けている場合は、原因となる食品を避けるのが基本的な対策です。
とはいえ、現在、法律上のルールとしてアレルギー物質の表示が定められるのは、箱やポリ袋、缶や瓶、ペットボトルなどの容器包装された加工食品のみです。店頭で売られる包装されていない総菜や弁当、パン、菓子、また外食の料理の多くには表示義務がありません。食べる本人が十分に注意する必要があります。そこで大切なのが、食材についての知識です。
「小麦のアレルギーでは、カレーを食べた後に症状が起こるケースに注意しています。とろみを付けるために小麦粉が使われているのを知らずに食べてしまうためです」
どの料理にどんな食材が使われているか、常に確認する習慣をつけましょう。過去にアレルギーを発症した食物をうっかり口に入れてしまったときや、口にして違和感があるときは、すぐに吐き出して口の中をしっかりゆすいでください。
情報共有でリスクを減らす
血圧低下や意識障害を引き起こすアナフィラキシーショックは、生命に関わるリスクがあります。
アレルギーのために食べられない、飲めない、触れられないものがあれば職場の人と情報共有しておきましょう。食事会や旅行のときに事前に周知しておくことが重要です。
「食物アレルギーの自己申告は義務ではありませんが、できれば入職時に伝えておくのがベストです。職業性の食物アレルギーが仕事に関することで発症すれば、本人ばかりか会社に不利益をもたらしかねません」
食物アレルギーには、命を落としたり後遺症をもたらしたりするリスクがあります。アレルギーについて知っておく・知ってもらうのは、会社と本人、双方にとって重要です。
仕事では会食やお土産として食品をもらう機会も少なくありません。特定の食品にアレルギーがある場合、同僚や客先にも知っておいてもらう必要があります。
企業としても食物アレルギーについての知識や理解を深め、適切な対応を心掛けましょう。
アナフィラキシーに備え、エピペンの所持が必須
エピペンのイメージ図
過去にアナフィラキシーを発症し、医師にアドレナリン自己注射薬「エピペン」を処方された人は、必ず常に所持・携行を。発症したら自分で注射するが、症状や状況によっては誰かの補助が必要になる場合もある。エピペンの所持についても、会社にぜひ伝えておきたい。
会食や外食を安全に楽しむために
アレルギーがある食品を周知する
職場での会食や宴会では、できれば参加者全員、少なくとも幹事には、アレルギーのある食品について伝えておく。提供された料理にアレルギー食品が含まれている可能性があれば、食べるのを控えるのも大事だ。

外食や総菜・弁当などの食材を確認する
外食や店頭で総菜・弁当などを購入するときに、該当する食材が含まれていないか必ず店の人に聞こう。飲食店を予約する際にも食物アレルギーへの対応が可能か確認を。特にアナフィラキシーの経験者は強く心掛けたい。

料理に使われる食材の知識を深める
小麦によるアナフィラキシーの再発は大人に多い。小麦は多様な食品に含まれるが、その認識が甘い傾向がある。例えば、ギョーザやシューマイの皮もその一つ。身近な料理に使われている食材に関心を持ち、知識を深めよう。

鈴木 慎太郎
昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門 准教授同 医学教育学講座 准教授
医学博士。日本内科学会総合内科専門医・認定医・指導医。日本呼吸器学会専門医・指導医。日本アレルギー学会専門医・指導医。日本結核・非結核性抗酸菌症学会認定医。成人の食物アレルギー、アニサキスアレルギー、アナフィラキシーなどを中心に診療する他、アレルギー専門医の教育にも従事する。