忙しいときこそ知っておきたい
健康生活のススメ
労働損失を防ぐ
頭痛の対処法
- 健康経営
- プレゼンティーイズム
- 片頭痛
- 緊張型頭痛
- 群発頭痛
- くも膜下出血
この記事のポイント
- 慢性頭痛は仕事の生産性低下の原因
- 頭痛体操やストレッチといったセルフケアを取り入れる
- 職場では可能な範囲で頭痛を抱える従業員に配慮する
年度の変わり目が近づき、忙しさやストレスによる頭痛が起こりやすくなる時期です。「たかが頭痛」と軽視しがちですが、無理をすると仕事の生産性低下を招きます。正しい知識と適切な対処法を身に付けましょう。
仕事の生産性に大きく関わる
慢性的な頭痛を理解する
経済産業省が2014年度から開始した「健康経営度調査」の項目に、2021年度から「片頭痛・頭痛」が追加されました。健康経営度調査とは、法人の健康経営の取り組み状況と経年での変化を分析し、「健康経営銘柄」の選定及び「健康経営優良法人(大規模法人部門)」の認定に活用されるものです。
「片頭痛・頭痛」の健康経営における重要性が高まっている理由について、富永病院院長で脳神経内科部長、頭痛センター・センター長を兼任する竹島多賀夫さんは次のように説明します。
「健康上の理由で従業員が欠勤や休職をせざるを得ない状態『アブセンティーイズム』や、出勤しているものの健康上の問題で仕事の生産性が低下した状態『プレゼンティーイズム』を招く要因の一つだからです」
特に近年、社会的に注目されているのが、プレゼンティーイズムによる経済損失(労働損失)の大きさです。2025年11月に発表された、首都圏の市役所職員を対象に行われた慢性頭痛の調査結果※1では、片頭痛による年間推定賃金損失は約3,920万円(約26万7,000米ドル)に達し、そのうち約8割がプレゼンティーイズムに起因すると報告されています。
頭痛には慢性頭痛とも呼ばれる「一次性頭痛」と、急性頭痛とも呼ばれる「二次性頭痛」の2種類があります。
主にプレゼンティーイズムに影響するのは一次性頭痛です。
15歳以上の日本人の約4割が何らかの慢性頭痛(一次性頭痛)を経験しているとの報告※2があるように、一次性頭痛は日本人にとって身近な病気の一つです。一方で、「この程度の痛みは我慢しなくては」「頭痛くらいで仕事を休めない」と無理をする人が多く、周囲の理解も不十分な現状があります。
経営者も従業員も頭痛に対する正しい知識を持ち、適切な対処を実践しましょう。健康維持につながるのはもちろん、仕事の生産性向上や健康経営の推進といった効果も期待できます。
- ※1M Shibata,et al.Chronic headache disorders as a threat to brain health among employees of a city office in the Tokyo metropolitan area. J Headache Pain.2025 Nov 6;26(1):240.
- ※2F Sakai,et al. Prevalence of migraine in Japan: a nationwide survey. Cephalalgia.1997 Feb;17(1):15-22.
「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」の
主な症状を知る
一次性頭痛(慢性頭痛)とは、原因となる疾患がなく、頭痛自体が病気である状態です。代表的な一次性頭痛には「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」があり、三大慢性頭痛とも呼ばれます。それぞれの症状の主な特徴は次の通りです。
画面を拡大してご覧下さい。
片頭痛患者の8割以上が未受診
進行を防ぐには早い段階での受診が大切
三大慢性頭痛の中で、特に生活や仕事への支障が大きいのは片頭痛です。2022年に日本の健康保険協会員2万1480人を対象に行われた片頭痛に関する調査※3では、次の結果が報告されています。
- 片頭痛を有する人(片頭痛の可能性がある人を含む)の割合は全体の3.2%
- 片頭痛を有する人の割合が最も高い年齢は30~39歳
- 女性の片頭痛を有する人の割合は男性の4.4倍
- 医師の診断を受けていない片頭痛患者の割合は81%
- 片頭痛患者の80%以上は市販薬を使用し、4.8%の患者が処方薬のみを使用
- 頭痛症状が重症であると認識する患者は約52.9%
- 片頭痛患者の大部分(72.9%)が、日常生活活動の障害程度が中等度~重度と認識
- ※3F Sakai,et al.A study to investigate the prevalence of headache disorders and migraine among people registered in a health insurance association in Japan. J Headache Pain.2022 Jun 23;23(1):70.
この結果で注目したいのが、片頭痛によって日常生活に支障を来たしながらも、8割以上が医療機関を受診していない点です。片頭痛が慢性化すると、痛みの処理に関わる脳の領域に変化が起き、脳の萎縮を引き起こす可能性が近年の複数の研究で示唆されています。そうした状況を防ぐためにも、なるべく早い段階で適切な治療を受けることが大切です。
軽症であれば「非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDs(アスピリン、イブプロフェン、ロキソプロフェンなど)」や、「アセトアミノフェン」配合の市販の頭痛薬で痛みが治まる場合もあります。ただし、薬の飲み過ぎは「薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)」の原因になります。なるべくカフェインや鎮静成分を含まない単剤の頭痛薬を服用するのが予防のポイントです。頭痛薬を飲んでも頭痛が治まらない、頭痛薬を月に10日以上服用するといった場合は医療機関(脳神経内科や頭痛外来)を受診しましょう。
なお、生活や仕事に支障を来たす中等度~重度の頭痛がある場合は医師の診断を受け、適切な治療薬を処方してもらう必要があります。自分の頭痛が片頭痛かどうか分からない場合は、次のチェックテストを参考にしてみましょう。
片頭痛スクリーナー
画面を拡大してご覧下さい。
4つの質問のうち2つ以上「時々」「半分以上」が該当した場合は、片頭痛の可能性が高いと考えられます。かかりつけの内科で相談し、症状が強い場合は脳神経内科や専門の頭痛外来を受診するのがおすすめです。
この記事は、読者登録をすることで続きをご覧いただけます。
残り3809文字 / 全文6641文字
竹島 多賀夫
社会医療法人 寿会 富永病院 院長脳神経内科 部長 頭痛センター・センター長
富永クリニック 院長(兼任)
医学博士。2011年より京都大学医学部 臨床教授、奈良県立医科大学 臨床教授、近畿大学医学部 非常勤講師。2019年より兵庫医科大学 臨床教育教授。日本頭痛学会 代表理事、専門医・指導医。日本神経学会 名誉会員(元理事)、専門医・指導医。脳神経内科全般、頭痛症、パーキンソン病を専門とし、国内でもトップクラスの診断と治療を手掛ける。