その言葉、アウトです!

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お母さんなのに時短にしないの?

企業におけるコンプライアンス違反が頻繁に取り沙汰されている。
昨今、何気なく発した一言がきっかけで大問題に発展するケースも少なくない。本コラムでは、つい言ってしまいがちなキーワードから、なぜそれが「アウト」なのかを掘り下げよう。

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昨今、企業におけるコンプライアンスや多様なハラスメント問題が社会から厳しく問われている。上司が従業員に、また従業員同士で、たとえ悪意なく発した言葉や行動であっても、それが相手の心情や人格、尊厳を傷つける場合もある。

問題ある言動がSNS(交流サイト)で拡散することもしばしばで、世間に広まり不祥事として事業の命運を左右するケースもある。一度悪評判が立つと、それを払拭するのは並大抵のことではなく、経営をも揺るがす事態に発展しかねない。

企業を健全に運営し長く存続させるためにも、発する言葉の意味を吟味し、相手にどう受け止められるのかをしっかりと認識したい。

お母さんは早く退社すべき!?

子育てをしながら勤務している女性従業員が仕事に打ち込んでいるときに、良かれと思って「お母さんなのに時短にしないの?」などと声がけをしていないだろうか。

この言葉は「お母さん」に対して使われるケースがほとんどで、シングルファーザーでない限りは「お父さんなのに......」とはあまり言われない。男女で子育てする意識を持つべきこのご時世に、「母親は育児を優先すべき」という考えは改めたい。

さらに、「お子さんがかわいそうだよ」などという一言が加わると、相手を傷つける刃やいばにもなり得る。仕事と育児を両立させている従業員は、時間的にも精神的にも余裕がない状態で頑張っている人が多い。そんな人が、子どもを引き合いに出されて「かわいそう」と言われれば、張りつめていた心が折れてしまうこともある。

また、パートタイムなど時給換算で働いている人は「103万円の壁」を気にしつつも、限度内で最大限働きたいと思っている場合もある。「時短にしないの?」という声かけは、本人の意向に反するかもしれない。

「いつも頑張ってくれてありがとう」とねぎらい、それぞれの働き方を尊重することが肝心だ。

監修

稲尾 和泉

クオレ・シー・キューブ 取締役

2003年4月からクオレ・シー・キューブにてカウンセラーおよび研修講師。産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント、精研式SCT(文章完成法テスト)修士、日本産業カウンセリング学会会員。共著に『パワーハラスメント』(日本経済新聞出版)など