その言葉、アウトです!

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こんなに仕事のできないヤツ、見たことない!

企業におけるコンプライアンス違反が頻繁に取り沙汰されている。
昨今、何気なく発した一言がきっかけで大問題に発展するケースも少なくない。本コラムでは、つい言ってしまいがちなキーワードから、なぜそれが「アウト」なのかを掘り下げよう。

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ミスを何度も繰り返したり、なかなか成長しなかったりする従業員に対して、我慢できずこんな言葉を吐いたことはないだろうか。どんな場合であれ、「お前はダメなヤツ」と人格否定するのはNGだ。ミスの内容にきちんと言及しつつ、繰り返さない方法を指導して、従業員と一緒に改善策を考えよう。

当人が悩み事や何らかの事情を抱えているために失敗が続くケースもある。所属部署の人員不足の他、顧客側の問題など固有の理由も考えられる。他の人の前では話しづらい内容もある。従業員と1対1で話を聞き、原因をひもとくことが大切だ。

社長や上司が「ビジネスでの常識」と認識しているものが、世代の違う部下には想定外で、結果としてミスや失敗につながる場合もある。

自分の若手時代の経験や常識と、現代の若い世代を取り巻く環境や共通認識は大きく異なっているものと考えよう。

世代で「常識」は異なる

例えば電話の取り方。各家庭に固定電話があった時代は、基本的な電話応対は日常生活ですでに身に付いていた。入社時にはビジネス用の応対だけを指導すればよかった。現在は固定電話で話した経験がなく、スマホに直接通話かLINEが主で、メールに不慣れな若い世代もいる。「会社の電話で話すのが怖い」という声もしばしば聞く。単なる経験不足がミスの原因となる場合もある。

仕事上の謝罪はメール、電話、訪問のうちのどれがふさわしいかは、ミスの大きさや相手によって変わる。若い世代は「電話よりメールの方が記録が残り丁寧」と考えがちだ。社長世代は「電話や訪問をして話さないと気持ちが伝わらない」と考える傾向がある。

「ビジネスの場の常識」の変化は近年特に著しい。世代だけでなく個々人でも考え方が異なるのは当たり前だ。「これが常識」と一方的に決めつけず、企業としての対応の仕方を全体で確認しよう。できていなければ丁寧に指導する。個別対応を心がけよう。

監修

稲尾 和泉

クオレ・シー・キューブ 取締役

2003年4月からクオレ・シー・キューブにてカウンセラーおよび研修講師。産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント、精研式SCT(文章完成法テスト)修士、日本産業カウンセリング学会会員。共著に『パワーハラスメント』(日本経済新聞出版)など