その言葉、
アウトです!

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Aさんはパートだから使えないね

企業におけるコンプライアンス違反が頻繁に取り沙汰されている。
昨今、何気なく発した一言がきっかけで大問題に発展するケースも少なくない。本コラムでは、つい言ってしまいがちなキーワードから、なぜそれが「アウト」なのかを掘り下げよう。

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パートタイムの従業員を、雇用形態によって見下すような言い方をしていないだろうか。多くの会社が正社員の人員確保に頭を悩ます近年、パート従業員が果たす役割は大きい。採用できないと仕事が滞り、他の従業員の負担が増える。業務に支障をきたす事態も起こり得る。

経営者や上層部はパート従業員と仕事上の接点が少ないケースはよくある。そのため、雑談の場で何気なく軽んじる言葉を発しがちだ。上層部の発言は知らず知らずの間に周囲に浸透し、職場内にパート従業員を見下す風潮を生みかねない。こんな環境ではパート従業員の勤労意欲はそがれ、定着率も悪くなる。雇用形態で対応に差を出さないことが重要だ。

働く人に感謝を伝えよ

パート従業員をぞんざいに扱っていると、相手を傷つけるだけでなく、会社の経営自体を危うくしかねない。

パート従業員は、自宅近くの会社で働くケースが多く、地域とのつながりが強いのが特徴だ。もし会社での差別的な対応を不快に思ったら、地域のコミュニティーで話すかもしれない。あるいは近くの別会社に転職したら、前の職場での嫌な体験を話題にする可能性もある。すると、ひどい対応をする会社として悪評が立つ。その噂が広がれば、今後の採用に大きく響き、人員確保は難しくなる。

ではどうすればよいのか?

ある会社は、あらゆる雇用形態で働く人の定着率が非常に良いという。アルバイトやパートを含む従業員が退社する際に、社長が「いつもありがとう」「あなたがいてくれてとても助かっているよ」と感謝の言葉を伝えているからだ。

社長や上層部からこのような声がけがあると、「自分はこの会社に必要とされている」「役に立っている」と実感できる。社内での存在価値が確認でき、意欲ややりがいにつながる。

働いてくれる人に感謝し、それを言葉で伝える。ちょっとした気遣いが職場の人間関係を良好にし、定着率の向上につながるのだ。

監修

稲尾 和泉

クオレ・シー・キューブ 取締役

2003年4月からクオレ・シー・キューブにてカウンセラーおよび研修講師。産業カウンセラー/キャリア・コンサルタント、精研式SCT(文章完成法テスト)修士、日本産業カウンセリング学会会員。共著に『パワーハラスメント』(日本経済新聞出版)など