トレンドを読み解く今月の数字

ちまたには様々な数字があふれている。それらは時に大きな意味を持つ。
「数字」から世の中の事象を切り取ってみよう。

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~日本における
生産額ベースの食料自給率~

Number Of The Month

Font "DSEG" by Keshikan. SIL Open Font License 1.1

日本の食料供給に対する、国内生産の割合を示す指標である食料自給率。自給率には、単純に重量で計算する「品目別自給率」と、食料全体の単位をそろえて計算する「総合食料自給率」があり、後者はさらに「カロリーベース」と「生産額ベース」で算出される。

今回取り上げた"58%"は、農林水産省が発表した2022年度のもので、国際的に主流である「生産額ベース」で算出された数字である。生産額ベースの食料自給率は、生産・輸入・流通・販売など食料に関する活動の経済的な価値に着目した算出方法で、ものさしとなるのは"金額"である。計算式は、「食料の国内生産額÷食料の国内消費仕向額×100」。食料の国内消費仕向額とは、国民に供給される食料の生産額を表す。22年度は、食料の国内消費仕向額の17.7兆円が分母で、分子は食料の国内生産額10.3兆円となる。

食料自給率を品目別に見ると、高い数字が並ぶのは米99%、野菜79%、魚介類(食用)56%。一方、輸入に頼っているのが小麦や大豆、油脂類で、大豆に至っては6%。味噌や納豆、豆腐の原料はほぼ外国産というわけだ。

食料自給率の認識が第一歩

日本の食料自給率は、食の中心が米だった1946年度には88%だったが、その後、食生活の変化で長期的に低迷し、主要先進国の中でも最低水準だ。他国の自給率(2020年)を見ると、カナダ124%、オーストラリア110%、米国92%、イタリア87%。イタリアは国土面積こそ日本の8割程度だが、欧州有数の有機農業大国で、付加価値の高い有機農産物や有機食品の輸出が生産額ベースの食料自給率に反映される傾向にある。

世界の食料事情は、気候変動や紛争、人口増加から不安定さが増している。食料の安定供給は、人間の生命維持や国家の存続にもつながる重要課題だ。日本の食料供給を保つには、農地の集約や麦や大豆への生産転換など、取り組むべき課題は多いが、まずは現在の食料自給率を認識することがその第一歩となるのではないだろうか。

  • 出典:農林水産省「令和4年度食料自給率・食料自給力指標について」「令和4年度食料需給表」