トレンドを読み解く今月の数字

ちまたには様々な数字があふれている。それらは時に大きな意味を持つ。
「数字」から世の中の事象を切り取ってみよう。

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~相対的貧困の基準となる世帯年収~

Number Of The Month

Font "DSEG" by Keshikan. SIL Open Font License 1.1

物価の高騰が続いている。日々の生活にも大きな影響があり、頭を悩ませている人も多いかもしれない。今回取り上げるのは「相対的貧困」に関する数字だ。相対的貧困とは、同じ国や地域における生活水準を比較した場合、大多数の人より経済的に貧しい状況――冷蔵庫が買えない、給食費が払えない――などをいう。経済協力開発機構(OECD)が用いている国際的な指標である。

厚生労働省が2022年に発表した「国民生活基礎調査」によると、21年の我が国の相対的貧困率は15.4%。世帯収入127万円という数字は「貧困線」(※1)で、相対的貧困の基準となる世帯年収(一人世帯)となる。日本の相対的貧困率は、OECD加盟国38カ国中7番目に高く、G7の中ではワースト1だ。日本国民のおよそ6.5人に1人が貧困状況にある計算になる。

年金を主な収入源とする高齢者世帯の貧困率の高さも気になるが、ここで注目したいのはひとり親世帯だ。同調査における生活意識にも表れており、全世帯の51.3%が「生活が苦しい」と回答。母子世帯は「苦しい」と回答した75.2%のうち、「大変苦しい」が半分以上を占める。

急がれる母子世帯対応

母子世帯の様子を別の調査(※2)で見ると、父子世帯14.9万世帯に対し、母子世帯は約8倍の119.5万世帯にもなる。就業率だけを見ると、父子世帯88.1%、母子世帯86.3%で差は見られない。だが、母子世帯における就業形態は非正規労働の割合が高いこともあり、両世帯の就労収入には大きな差が生じている。

世帯の貧困は、子どもの貧困に深くつながり、貧困の連鎖が世代に渡って続く可能性も少なくない。

こうした状況下、「こども家庭庁」を中心に、自立支援教育訓練給付金や高等職業訓練促進給付金といった母子世帯に対するキャリア支援や子育て支援も強化している。大切な働き手である母親が安心して就労でき、働きに応じた収入を得られる環境の整備が急がれる。

  • ※1出典:令和4年「国民生活基礎調査」厚生労働省
    貧困線とは、等価可処分所得(世帯の可処分所得[収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入]を世帯人数の平方根で割って調整した所得)の中央値の半分の額をいう。
  • ※2出典:令和3年度「全国ひとり親世帯等調査」こども家庭庁