トレンドを読み解く今月の数字

ちまたには様々な数字があふれている。それらは時に大きな意味を持つ。
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~2024年 日本の世界遺産の数~

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1972年ユネスコ総会で世界遺産条約は採択され、75年に発効した。目的は「文化遺産及び自然遺産を人類全体のための世界の遺産として損傷、破壊等の脅威から保護し、保存することが重要であるとの観点から、国際的な協力及び援助の体制を確立すること」とある。2024年の時点で世界196カ国が同条約を締結し、登録された世界遺産は文化遺産952件、自然遺産231件、複合遺産40件を合わせた1223件となった。

日本が条約に批准したのは、採択から20年後の1992年だ。世界で125番目となる。最初に登録されたのは法隆寺地域の仏教建造物(奈良県)などの文化遺産2件、屋久島(鹿児島県)など自然遺産が2件だった。以後はほぼ毎年登録が続き、2024年の佐渡島(さど)の金山(新潟県)を合わせて、文化遺産が21件、自然遺産が5件の計26件が登録された。なお、将来的に登録審査の計画がある物件として彦根城(滋賀県)や古都鎌倉の寺院・寺社ほか(神奈川県)など4件が予定されている。

観光資源化が懸念

世界遺産は、保護・保存を目的として制定された。しかし、近年の気候変動や内戦などの破壊行為が理由で存続が危ぶまれる危機遺産も56件(2024年時点)に上る。一方で、世界遺産の観光資源化も大きな課題だ。登録後に急増する観光客による影響から、本来守られるべき世界遺産に深刻な問題が生じるケースが増加。国によっては1日の観光客数を制限したり、観光客に対して入場料を設定したりといった対策を進めているところもある。

世界遺産の登録件数は毎年増え続け、直近の10年間で200件以上(※1)に上る。将来的にはその上限についても検討が必要との声も上がっているようだ。条約の発効から50年となる今年、世界遺産が単なる観光資源として消耗されることなく、人類共通の財産として未来に引き継がれるよう、改めて保護・保存という本来の目的を考える節目に来ているのかもしれない。

  • ※1「世界遺産に関する基礎データ集」(令和2年3月 文化庁)